ほぼ同時期に上梓された『驚異! 透明標本いきもの図鑑 (別冊宝島 1663 スタディー)』が、書名通り、「透明標本を用いた生物図鑑」であったのに対して、本書は「透明標本そのものを鑑賞することを楽しむ本/写真集」である。
同じ「透明標本」をモチーフとしながら、スタンスが全く異なる二つの本が、しかもほぼ同時期に上梓されると言うのは面白い。両者の違いはいわば、「水族館の水槽と商業移設の展示水槽の違い」。あるいは「動物園とペットショップの違い」。そんなところか。
ただ、この本が単なるコマーシャリズムに終わらなかったのは、後半に掲載されている、カエルを飲み込んだヤマカガシの写真のお陰だろう。透明化されたヤマカガシの骨格の上に重なった丸い陰が、まるで何かに手を合わせるかのような姿で生きたまま丸呑みにされて絶命したニホンアマガエルの骨格であることに気付く時、それまではまるで美しくも人工的なオブジェに過ぎないかのように見えていた透明標本のそれぞれが、かつては紛れもなく生きて動いていた生命そのものの変わり身であることを認識して、我々は軽い戦慄を覚えるのである。
それが著者の計算によるものか、偶然の産物によるものかは分からない。ただ、ヘビとカエルとの間で交わされた生命のやり取りの瞬間を固定化に成功した、ただ美しいだけではない標本の緊張感が、本書全体に新たな意味を与え、もしかしたらただのスノビッシュな写真集に終ったかもしれない本書を、一つの映像詩の領域にまで高めている。
願わくば本書を手に取った人が、ただ自然の造形の妙に心奪われるだけでなく、そこに宿っていた生命の不思議に共感し、吠え、噛み、暴れ、毒を放ち、臭い息を吐き、排泄し、病んで死んで腐敗する、生き物の命そのもののへの関心と敬意とを抱いてくれますように。本書がそのきっかけになりますように。
心から祈りたい。
この写真集に掲載されている写真は、
「透明標本作成の手法を用いて作成された『作品』(?)」
であって、
『標本』として評価すべきものではないように思います。
カラーバランスを調整してあったり、
個体の一部をわざとぼかしたりしているので、
骨格の観察には不向きです。
しかしながら、透明標本の手法を用いた作品をモチーフにした写真集はこの本が恐らく初めてでありましょうし、
デザイン関係の写真集として楽しむのであればよいのではないでしょうか?
透明標本を科学的に捉えるか、
アート、デザインとして捉えるかによって、
評価が大きく分かれる写真集だと思います。
「新世界」とタイトルに付けられているように、
いつも見ている・知っていると思っていた生物たちの新しい世界。
学術的な情報がほしければ専門書をひもとくのが一番ですが
この本は手軽で、プレゼントにも最適。
解説がシンプルでレイアウトが良いと思います。
生物に命があった時の躍動感が伝わるような美しい写真が特徴で
透明になった筋肉を支える、染色された骨のデザインにワクワクします。
生物って素晴らしいですね。
魚、甲殻類、軟体動物、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類。
様々なカタチに興味がある方は是非、手に取ってもらいたいです。
生物をアートとして扱う事には賛否両論あるかとは思いますが、私はこの本が、子供達が生物の進化について考える機会を持つ為の一助として、大いに役立つと思います。
少なくとも私自身は、学生時代に理科室の棚に並んだホルマリン漬けの標本を見て、生物学や考古学に興味を抱いた覚えはありませんでした。
「この骨は、何でこんな形に伸びているんだろう・・・」
学生時代に戻った気分で、太古の地球に思いを馳せる事ができました。
こういった処理や見せ方もあるのだな~、と。
科学の世界は、基本的に無駄を除く手法がとられるから、観点(見せ方)を変えれば実に洗練されたアートにもなるのですね。
透明標本についての何がしかの知識や、
作成方法などを学びたい人には
まったく役に立たない本。
透明標本を綺麗だなと思って、
実物を手元には置けないけれど……という人には
素晴らしくオススメできる本。
実物の標本を購入しても、
年がら年中ホワイトバッグに明かりを当てていられるわけでなし。
生ものだから管理も大変だし、
捨てるとなったらどうすればいいのか。
その点、この写真集なら標本の美しさは十分堪能できるし。
本棚にしまえるのだから手軽でよろしい。
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