2014年7月4日金曜日

父さんのからだを返して―父親を骨格標本にされたエスキモーの少年 [単行本]

父さんのからだを返して―父親を骨格標本にされたエスキモーの少年 [単行本]

読んだあと、もうもうとした空気しか
流れませんでした。
人間はここまでも残酷に
同じ人間の人生をめちゃくちゃにしてしまえる
ものなのかということ…

しかもさらに悪いことに
その探検家は連れてくるだけつれてきて
何も責任も取らなかったこと。
彼にとっては金でしかなかったこと。

これを読んで一人の探険家が嫌いになりました。
むごいことまでして栄光を手に入れていたとは…
幸せをつかみたくてもつかめず、
短い一生を終えてしまった生き残りの青年ミニックが
あまりに不憫で悲しくなりました。
主人公ミミックは幼くして「見世物同然に」アメリカに渡り、ともにわたった父親とも死に別れ、里親にはよくしてもらったものの、アメリカにもエスキモー社会にもなじめないどこにも所属できない宙ぶらりんの人間となってしまう。ここでミミックが、ものすごく立派な大人となり、父親の骨を返してもらうために人種差別撤廃運動をうんぬん・・となればストーリー性充分なのだろうが、この本はそうはならない。そしてそれこそが現実であり、その物悲しい現実を客観的事実をふまえながら作者は淡々と描いていくのだ。
それにしてもアメリカ白人冒険者たちの、薄情で傲慢なことよ!当時のアメリカの白人至上ご都合主義を知ることができるだけでも、一見の価値がある本である。
読み応えがある本ですが、読みやすいのと内容が実に興味深い。
多くの方が立派な書評をしていますので、書評は辞退しますが、
多くの人に読んでいただきたい本です。
たった100年前の倫理観・人権感覚はこんなものだったのかと愕然とした。紹介されているエピソードはショッキングだ。騙して連れてきたエスキモーの子供が体調を崩して苦しんでいる脇で、その子が死んだ時の遺骨の売買交渉をやっていたというのだ。たった100年前と書いたが、実は今でも同じような発想はまかり通っているのかもしれない。とにかく色々考えさせられる本である。


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